今の金融市場と中央銀行の金融政策について思うこと

以前ここに「パウエルは景気の落ち込みにビビってインフレ退治のための利上げのピッチを緩めるのではないか」と予想したがFRBは俺の予想に頭にきたか, その逆に利上げピッチを早めてきた. 結果アメリカ株の底割れが止まらず今に至っている. 実はこれも予想済みでFRBや経済学者のような権威はメンツにかけて学問的には素人の俺の予想を潰しにくるのが常だ. 俺は現代貨幣理論バブルの責任を取ろうとしないFRB・日銀と金融業界と株式市場を潰すためにパウエルを「挑発」したつもりだった. それで怒ってしまったFRBは敢然と利上げを続け今の株式市場の底割れの継続に至ったわけだ. しかしここに至ってパウエルの強硬な利上げ姿勢が変化し利上げの打ち止めを示唆しているので米国債の金利が下がりはじめドル安円高に振れている. 「単独介入では相場の方向は変えられない」のは真理で今回日銀の単独介入に応じてFRBが利上げペースを緩めてきたからある意味協調介入となり円安の流れが変わったようだ. しかし長期トレンドで確実に円安方向だから今後円高が始まってもそれは円の大暴落相場の大きなコレクション(修正)に過ぎず長期トレンドでまた円安になる可能性がある. もし米国債金利が今後大きく下がるようなら今米国債を買って満期まで持つとか外貨定期預金を組むのにはいいタイミングだ. ドルの1年定期で4.5%の金利は魅力的ですでに自分も購入している.

来年からアメリカに相当強烈な不景気風が吹くのは確実で商品は売れなくなるし労働者はどんどん解雇されるから商品の原材料となる金属や農産物やエネルギーの消費も減るので次第にインフレは収まっていく. これが健全な景気循環サイクルだがまだプーチンが戦争をやめないのでエネルギーリスクは続きインフレは続くかもしれない.

今パウエルが熟考しなければならないのは利上げのさじ加減で一歩間違って利上げのタイミングを間違えば日本のバブル崩壊後の「失われた10年」のような強烈な抜け出せないデフレに見舞われる可能性が高い. 空気を抜かれるバブルという風船が一気にしぼんでいくようにバブル崩壊後の金融のシュリンク(収縮)は迅速なのでFRBが手綱を謝ると市場は崩壊する.

バブル期の日銀の公定歩合推移

1987/2/23             2.5%

①1989/5/31             3.25%(+0.75)

②1989/10/11           3.75%(+0.5)

③1989/12/25           4.25%(+0.5)

④1989/3/20              5.25%(+1.0)

⑤1990/8/31              6.00%(+0.75)

1991/7/1                5.5%(-0.5)

1985年のプラザ合意でアメリカに命令された形となった日銀の大金融緩和が始まりその金が土地と株に流入し狂気の資産インフレバブルが発生した. 計算上当時の東京都の土地の価格でアメリカ一国を買うことができるまでに土地は暴騰した. この狂乱地価・狂乱株価を止めるために「インフレ退治の平成の鬼平」と呼ばれた日銀三重野総裁が①回目〜③回目の利上げを行った. その直後の1989年の大納会で日経平均は38,957円の史上最高値をつけたが翌年の大発会から暴落を始めた. 株式市場の暴落を横目に見ながらも三重野総裁は「二度と株のインフレが起きないように予防的に利上げを継続する」と宣言しその年の3月に④回目の利上げ, 8月に⑤回目の利上げを断行した.  この二回の利上げで日本の株式市場の崩壊とその後の失われた10年は決定的となった. この頃俺はまだ株式投資の経験が浅く3/20の利上げ発表の暴落が加速した同日飼っていた猫が事故で死んでしまい俺は経験したことのない失意のどん底に落ちた. その後8月に湾岸戦争が起き原油が暴騰し株式市場は3月の一番底を割れた. この月三重野が⑤回目の利上げを断行すると株式市場は加速して奈落の底に落ちていった. 当時の危機的な金融市場の情勢を鑑みると三重野の利上げは明白な失敗だったといえる. いわば三重野はバブル敗戦の戦犯であり長くその不名誉な業績が歴史に刻まれることになった. パウエルらのアメリカのバンカーはこの話を研究して知っていると思うがパウエルも三重野のようにならないように十分注意するべきだ.

大バブルが起きる背景には必ず何らかのテーマがあるもので日本のバブルではそれは土地だった. 異常な高値をつけた地方の地価はバブル崩壊後1/5〜1/10にも落ち32年後の今もまだバブル高値に遠く及ばない. バブル高値は復興した戦後日本の経済成長のピークの象徴でバブル高値を山の頂上としてあとは下り坂が続き今も終わりがない.

昨年末高値までのアメリカ株のバブルはやはりMMT(現代貨幣理論)バブルというほかなくバーナンキのヘリコプターマネー(ヘリでドル札を散布するように金融緩和する)といった大金融緩和が株や商品や仮想通貨に流れそれが一気に崩壊した事実を疑う者はいまい. しかしマスコミを含めた業界全体で株や商品や仮想通貨に踊ったので今FRBやMMTの経済学者の責任を追求する者もいない.

今一つ象徴的なのは去年末までのアメリカ株のバブルは「チップ相場」だったということだ. NVIDIAやAMDといったマイクロチップ株が過剰評価され昨年末異常な高値をつけていた. 昨年末これらの株を買うと一日で利食いになるほどの上昇は「これは暴落のサイン」だと経験で知っていたので昨年末の12/20頃が大天井になるだろうとここに書いた. ウハウハのユーフォリア状態になったときが相場は一番危ない. このとき勇気を持ってビッグショートしておけば俺は大金持ちだったがなかなか自信を持てず年初からの下げを見逃してしまった. でも無理しなくてよかったと思っている. 今後は誰もが希望もダウンサイジングし経済活動に対しマインドが消極的になる. これが行き過ぎるとデプレッション(抑うつ的な不景気)となり誰もが買い控えを始め不景気の深化が止まらなくなる.

「人工知能による車の自動運転が始まりNVIDIAやAMDの画像処理チップはすべての車に搭載されるだろうから膨大なチップ需要が生まれる」とチップ株は買われに買われてきた. しかし今やはり車の自動運転は現代の技術では不可能だということが判明しこれらの株は下げ止まらない. いつでもバブルの末期は行き過ぎた希望的観測で買われすぎになるもので, そういう買われすぎた株が再度高値を奪回するのは5年10年先になることが多い.

(3月20日というのは自分にとっては特異日で④の利上げのあった3月20日には大切にしていた猫が死んだしその5年後の3月20日には地下鉄サリン事件が起き東京に住む一人として非常な危機感を感じ怖くなった. その292年前の1703年3月20日(旧暦の2月4日)には大石内蔵助以下四十七士が幕府の沙汰により切腹している. 武士の切腹とは自殺ではなく処刑のこと. 通常このような罪では斬首が普通だが温情により切腹を許されたことに大石ら義士は涙を流して喜んだと伝えられている.)

 

 

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